魚処したひら(下平鮮魚店)

いつか皆さんこの港町に足を運び、風土とともに魚を味わってほしいんです

本谷 真澄さん[加工品販売担当] 下平 勝則さん[店主]


鮮魚店の奥の座敷で地魚をすぐ味わえる

鮮魚、飲食、通販の3つを柱に、鮮魚店の脇を抜け、新鮮な魚が奥の座敷ですぐに食べられるというコンセプトです。店が裏通りで少々分かりにくい場所ですが、昔はここが大通りで、馬を引いた人が多く行き交い、大正時代に先代の祖父母が魚を並べ、奥で一杯飲み屋を始めました。その後、海だった辺りに新町商店街ができて人の流れが変わってしまい、親父の代はしばらく魚屋だけでやっていましたが、たまたまある人から「それは絶対復活させるべき」と言われ、確かに他店には無い特徴にもなるからと、平成18年の新築時に、奥は飲食ゾーンにしました。
港町の鮮度抜群の魚がポイントです。県外の方がちょくちょく来られ、皆さんに「こんないいものは無い」と言っていただけます。先日も東京の居酒屋の本部の方に、「これが東京にあったらすぐに流行る」と言われました。ああいう方たちはいろんな店を見ておられ、評価のポイントが違うので、会話にもヒントをもらっています。また、せっかく魚屋がやる直営店ですから、たとえば昼の定食の汁物ひとつとっても、ワカメと豆腐の味噌汁じゃあ普通で面白くありません。魚のあらでも入れれば違ってきます。
加工品販売を本格的に始めたのは、息子が4年前に入ってからです。魚の目利きを息子に教え、加工の工夫は任せています。とにかく地ものを使うというポリシーで納得のいく食材を求め、安心提供に努めているのが一番のこだわりです。独自の味わいを出すために、地元のイカ原料の魚醤「いしり」を本当にほんの少し、隠し味程度に使っています。

魚の目利きをいかし納得できる品を

思い描いているのは、何年掛かってもいいから「この町に来て食べてもらいたい」ということ。特に冬場はこっちの魚がどれも一番美味しくなる時季です。12月に入れば宇出津のシンボルの寒ぶりが出てきます。去年NHKのテレビ番組「おはよう日本」の取材が入った時も、「冬の寒ぶりなら、ぜひともこっちに食べに来てください」とPRしました。とにかくこの町に来て欲しいから。地元に来れば、漁師料理、家庭ごとの食べ方と、バリエーションもいろいろあります。通販で送っても伝えられない部分です。この風土で食べると、家に届いて食べるのと味わいも全然違いますよ。みんなこっちの方言でしゃべるしね。
実際に見る、会って会話をするってことはすごく大事だなと、魚が少ない時期を狙って営業がてらに外へ出るようにもなりました。県内外の料理屋さん等とのお付き合いで勉強させてもらっています。地方からなので移動時間がもったいないとも感じますが、時間は自分で作らないと。お送りする魚は相手も自分も納得できる品物を心がけており、そこは今後も決して妥協せずにやっていきたい点です。
家族経営でやってきて自分が三代目。いつ世代交代になるか分かりませんが、細く長くやろうと思っています。細く長くが一番です。

魚処したひら(下平鮮魚店)

■ 住所/〒927-0433 石川県鳳珠郡能登町宇出津ト字5-1
■ TEL/0768-62-0078
■ 代表者/下平 勝則
■ 創業/明治43(1910)年
■ 業務内容/鮮魚販売、飲食店、加工品販売

※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります