株式会社 田谷漆器店

輪島塗は修復でよみがえる ご家庭で眠る漆器に命を吹き込む技

田谷 昭宏さん[専務取締役]


修理で世代から世代へ 歴史を引き継ぐライフスタイル

輪島塗の製造販売を行う中で、特に修理を大々的に謳っています。「直るんですか」と驚かれることが多いです。「塗りものって、修理して使うものなんですよ」と、まず知ってもらうことが大切ですね。「傷が付いたから捨てた」と皆さんよく言います。「直るのなら捨てなければよかった」の声も聞きます。  日本全国どこの産地の漆器でも修理OKなのが、大きな特徴です。全国的に木製をやる方が減り、ほとんどプラスチックに変わった今、これはよその産地ではまず不可能でしょう。ホームページに修理前後の状態をいくつかの例で見せています。写真で比べると一目瞭然。その他、事前のやりとりを経て着手します。  ご家庭でお持ちの漆器は、お重と家族人数分の腕など決して多くはありませんが、だからこそ長年のうちに傷が付いたりして、実は困っていらっしゃいます。直せばまた使っていただけます。モノを大事に思うという願いが発想の原点。おばあちゃんが大事にしていたものだから、多少高くても直してといったケースもあります。どうしようかと迷っているものを修復し、その家の歴史、ご家族の成長を長年見守ってきた古い道具に、また新たな命を吹き込みます。

建築内装材に手応え 技を活かし新たな挑戦へ

当社の新しい動きとして、建築内装材への挑戦を始めています。先般も住宅フェアに出展し、興能さんからの紹介でハウスメーカー3社さんをお訪ねしました。輪島塗の扉、風呂桶など評判もよく、この分野も面白いと手応えを感じています。  さらに、販路として先代のおじいちゃんが行っていた料理屋さん、うなぎ屋さんなどを改めて回ることも考えています。輪島塗はかつては当地から全国に行商に出ていましたが、やはり得意な地域エリアがそれぞれあったようで、うちは静岡が多かったようですね。  販売では、昔は屠蘇器や重箱などの迎春用品が人気でした。お屠蘇は家族の年下の者から順に飲み、年少者の若さを年長者が貰うという意味があるのですが、年中行事のそうした謂われも習慣がないと若い世代に伝わりません。技術も同様で、日本のあらゆる伝統手法と技があってこそ日本はここまでの発展を遂げてきましたが、基礎を無くしたら今後どうなるのか、非常に難しい問題です。技術は無くしたら終わり。一度途切れたら復活できないものです。  当社には現在、塗りの職人4名がいます。修理も自社内に職人を抱えているからこそ可能な分野です。製造・販売と共に、修理もますます広げていきたいと思っています。

株式会社 田谷漆器店

■ 住所/〒928-0011 石川県輪島市杉平町蝦夷穴55
■ TEL/0768-22-0961
■ 代表者/田谷 勤
■ 創業/文政元(1818)年
■ 法人化/昭和63(1988)年
■ 業務内容/伝統工芸「輪島塗」製造販売

※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります