蕎麦処くき

店内で製粉する十割の手打ちそば そば屋ごとの味、食感も楽しんでほしい

久木 信雄さん[店主]


築100年の堂々たる古民家が懐かしさを誘う店

この古民家でそば屋を営み、11年目に入りました。元は茅葺きだった明治21年築のこの家を、転勤に次ぐ転勤の生活で10年程も空き家にした頃、「もうそろそろ帰らないと」と気持ちが募り、古民家でそば屋をやるのも良いかもしれないな、と脱サラしました。
そば打ち修業は、縁者からの紹介で鳥越のそば屋「唐変木」に通いました。今もここで習った連中で、「とうへんぼくな仲間」というそば屋の会を組織し、定期的に会って情報交換したり、蕎麦好きに各店を食べ歩いていただくスタンプラリーを行っています。
開店最初、「国道沿いならともかく、こんな奥で商売になるんか」と言われましたが、どうにか来ました。最初に取り上げていただいたテレビが、「人生の楽園」という番組。実は「とうへんぼくな仲間」の別のそば屋が出る予定だったのを急きょピンチヒッターで引き受けたんですが、放映後3カ月程は九州や北海道、全国からひっきりなしに電話が鳴り、まあ本当に忙しかったです。その後、ローカル各局でも拾っていただきまして、都度反響ってありますね。ゆったりした広いスペースの古民家で食事ができるので都会の方には珍しいのか、和倉温泉の方等が芸能人やキャスターの方もよくお連れになります。その中には「昔こんな家で育った。懐かしい」とおっしゃる方が意外といらっしゃいますね。

季節限定メニューも人気 冬は七尾湾の牡蠣

ここの立地がすごく良いのは、目の前の海が牡蠣の養殖場なんです。通常、蕎麦屋は冬枯れしますが、七尾湾の牡蠣は本当に鮮度が良いですから、牡蠣を食べに来ていただけます。蕎麦を入れた牡蠣のコース料理を作り、「こういう食べ方もあるのか」と喜ばれました。冬が近づくと「牡蠣蕎麦はいつから」と問合せが入ります。ほかの季節も、春先は山菜、夏は茄子、かぼちゃなどを使った夏メニュー。秋は9月中旬頃から、なめこ、まいたけ、しめじ等の「きのこそば」と、季節のそばを提供しています。
そば粉は店内で製粉して打ちます。表面がゴツゴツの十割そばもやります。切れやすいんですが、やはり自分の好みのそばですから。そば屋は各店で粉のブレンドが違い、そこで味、食感が変わります。だから、むしろそば屋がたくさんできて、あちこち食べ歩いてもらい、「この蕎麦はこうだなあ」と、お好きなそばを楽しんでいただくのが良いんです。
かえしも店で独自に作り、季節で比率を変えています。化学調味料を一切入れませんので、安心して食べていただけるんじゃないかな。
信条として、一茶庵の創始者、片倉康雄さんの言葉、「元を明らかにして調理を過たず」を基本に、お客さんに提供するものは全て理解するという教えを守っておそばに向かい合っていこう、そうありたいな、とやっております。お客さんに教えて貰い、育ててもらったのが、この10年です。

蕎麦処くき

■ 住所/〒929-2214 石川県七尾市中島町小牧ラ69甲
■ TEL/0767-66-6690
■ 代表者/久木 信雄
■ 開業/平成15(2003)年
■ 業務内容/自家製粉石臼挽き、手打ちそば

※業務内容や商品等はねっとわーく発行時から変更されている可能性があります